「理想の建物」と「理想の暮らし」

「理想の建物」と「理想の暮らし」

先日、昨年の7月にお引渡ししたお宅から外構関係の相談があり、訪問してきました。そのお宅はnichi-nichi-kaのLO-COバージョン、1階が11.25坪(㎡)、総2階建てなので22.5坪というコンパクトなサイズで、ご夫婦とお子さんお一人の3人の住まい。犬2匹と猫1匹も大切な家族です。

今回の訪問時撮影

22.5坪になった経緯は、風致地区の制限や既存擁壁にあまり近づけたくないこと、予算的な面もありました。そして、大きさを求めていない施主さんの考え方が大きかったと思います。

「住み心地はとても良くて、大きさも自分たちには本当にちょうど良かった」と、ご夫婦共にとても満足いただけている様子で、とても良かったです。

土地を新たに購入しての新築でしたので、住宅ローンの関係もあり、建物予算も上限が決まっていました。限られた予算では板張りのお風呂など、諦めなければならないこともありました。でも、満足できた理由としては、家自体(建物)に求めるものと、家を建ててから、どういった暮らしがしたいのかというイメージをしっかりと持っていて、家づくりを進める中でそのイメージを更に深めることができたからだと思います。

家づくりで大切にしたい部分があいまいだと、こだわる部分とあきらめる部分の判断を、的確に行うことが難しくなります。

このお宅でこだわった部分は、

・無垢の木と自然素材で造り健康的な暮らしができること、
・コンパクトで家事を含めて自分たちが暮らしやすい間取りであること、
・犬と猫に適切なスペースを用意して、ペットも快適に暮らせることなどです。

今は本当に多くの情報がインスタやyoutubeなどで手に入れることができます。間取りはこういったスペースがあると便利、動線はこうがいい、また階段や収納、個々の造作家具のデザインなど、理想を足し算で考えはじめると、どんどん要望が増えていきますし、費用もかかることになります。予算枠が決まっていれば、あきらめなければいけないことも増えてきます。

「理想の建物」を求める場合は、建物が完成した段階がゴールです。そこで自分の希望がどれくらい満たされているかが満足度になります。途中で諦めたことや最近見てやりたかったことがあれば、もっと予算があれば、もっと早く知っていれば後悔するかもしれません。そうならない為には、多くの予算を用意して、すごいエネルギーで情報を収集しないといけません。

一方、「理想の暮らし」を求める場合は、建物の完成は通過点でしかありません。建物の基本性能や間取りなど、理想の暮らしを支えてくれるベースとなる部分が出来上がれば満足できます。答えはその先にあり、それを左右するのは自分たちで、造り手から渡されたバトンを持って、どう走るかによります。だから、バトンを渡された時に、あれ?どっちに走るんだっけ?とならないように、理想の暮らしをイメージして、走る余力も残しておく必要があります。

伺ったお宅は、置いてある家具やラグ、小物など、長く愛用してきたと思われる品々があり、しっくりと暮らしに馴染んでいました。住み始めてまだ1年も経ちませんが、完全にお施主さんのものになっていました。延床面積22.5坪で、LDKは大きくない、玄関と呼べるほどのスペースもない、収納もそれほど多くない、個室も小さい、それでも住み始めて家族みんなが大満足な家になりました。

木材を初めいろいろなものが値上がりしている状況で、予算内に収めるのはとても大変なことです。単に小さくすればいいという事ではなく、「理想の暮らし」を考えて、しっかりと必要なものを判断できたこのお宅に、今の状況を乗り越えるヒントがあるような気がします。

取材の了承も得られましたので、いずれ詳細な暮らしぶりは、現在の写真と共にぜひご紹介したいと考えています。

Leave A Reply

*
*
* (公開されません)